2009年9月 ラクーン20周年記念釧路湿原ツアー 前編

  



シルバーウィークといわれた9月の連休 20周年記念ツアーとして釧路川を選んだのは、20年前カヌートリップラクーンを埼玉で立ち上げて最初の大きなツアーが、釧路川であったので原点にもどる意味合いで選んだ川であったのだが、上流部でとんでもない事故をおこした。
幸いにもだれも怪我することなく終わったが、一歩間違えば大惨事になるところであった。20年間いままでいろいろ大変なこともあったが、いつも何とかしてきた。業界では、諸墨は何とかする男とまで言われた。今回の事故は、だれでも安全に対する油断、判断ミスなど重なると起こす。たとえカヌー20年やっていても事故は起こすのだと思ったツアーであった。

 今回のカヌーツアーは、もろじい日記に書くことはやめようと思った。迷ったが、あえて書くことにした。俺は、人生においてリセット(やり直し)ができない。ラクーンもそうだ。事故をやったらおしまいだ!と思っていた。
 20年カヌーガイドとして突っ走ってきて だんだんと基本を忘れ ここで神様から顔に水をぶっかけられた気がした。「調子にのるな!基本に戻れ!」そんな声が聞こえた。

ツアーが終わた次の日。反省と検証、回収などで釧路川上流部を下ったとき現場下流でマイパドルを見つけてとき、神が俺にもう一度チャンスを与えてくれたと感じたのだ。
 カヌートリップラクーンに最初で最後のリセットを神が、あたえた川旅であったと思った。

9月19日(土)
 昼 釧路たんちょう空港に集合で釧路カヌーツアーが始まる。しかしスタッフ(俺とはるみどん)は、朝から忙しかった。食材の買い物を釧路でした。前回の釧路ツアーでお世話になった和商市場の田村商店さんには、今回もいくらやたらこなどお願いした。

 7人乗りレンタカーを借りて空港に行く。今回のお客さんは6名しかし飛行機の切符が取れなくて参加を断念したお客さんもいた。飛行機の切符を取るのが、かなり大変だったらしい。なんで釧路に下りてくる飛行機はあんな小さいのだ。
 7人乗りミニバンとトラックは、コッタロ湿原展望台経由で屈斜路湖湖畔キャンプ場に行く。展望台からはエゾシカが遠くに見えた。到着して驚いた。前回来たとき(3年前)とても静かなキャンプ場であったが、キャンパーでごったがえし。風が強く湖は、波高で騒がしい。ふたつのコテージを予約していたのでお客さんは、二手に分かれた。みな荷物を解いていてすこしのんびりしている間にレンタカーを明日のゴール地点の摩周大橋に置いてくる。夜飯は、風が強くコテージの中になった。

 少しずつ俺のイメージしたツアーとの違いに落ち着きがなくなってきていた。

静かなキャンプ場でコテージの外で星空の下で食事するイメージだった。深夜温泉につかって静かな湖を眺めながら酒を飲む俺のイメージが崩れた。

9月20日(日)   まさかの事故をおこす。

 朝からなんか落ち着きがなかった俺。風がすごく波高で騒がしい。ただ和琴半島の反対側は、波がなくフラットに見えた。朝飯後 しばらく湖の様子を見ていたが風がおさまる気配はない。朝の天気予報では、北海道は全域秋晴れなのに、ここは嵐だ。和琴半島のオヤコツ地獄は、キャンセル。半島の裏側がフラットであったので30分遅れでスタート。

 ここから湖を横断して釧路川に入り摩周大橋までのコースである。今思えばコースが長すぎた。湖横断は、途中から波高になり嵐になった。何度か休憩をいれ風がおさまってからスタートするもすぐ湖は荒れた。「釧路の自然と俺のリズムがまったくあってない!」

俺はつぶやいた。なんと釧路川入口に着いたのが午後2時近かった。皆疲れていたのでここでやめても良かったとは、あとになってからだ。2時を回ってから釧路川をスタートしたが、20分くらいで1組が沈。疲れと昼がまだであったので美登里橋で遅い昼飯。このあと美留和橋でもやめるチャンスはあったのであるが、さらにツアーは続いた。そしてこの先で川の中央に張り出した倒木に1組が引っかかった。後続の艇が進路をふさがれ沈。

この艇のレスキュー回収に時間がかかる。倒木に引っかかり底に沈んだカヌーは、ヘドロ化した川砂で重く時間と俺の体力をかなり消耗させていた。最初に引っかかった組は、かなり下流に行っていた。メンバーを変えスタート。しばらくして引っかかった組に追いつく。まだこの時点でやめる考えはなかった。早々にスタート。時間との戦いであった。そして札友内橋にきた。ここで俺は時計を見た。5時半だ。あと30分で暗くなる。30分あればゴールできる。
 大きな判断ミスをしたのだ。あと30分で暗くなるというのは、東京タイムだ。北海道の夕方は短い。まもなく暗くなった。トムラウシの山岳事故が頭に浮かんだはるみどんが、「モロさん、みんな一緒に行こうよ!」とバラバラになるたび遅れる組を待った。どんどん時間が過ぎる。やがてはるみどんが、ヘッドランプを出す。皆固まってヘッドランプのわずかな光で下った。俺の頭の中は、いろいろ考えが廻っていた。無理だ!どこかで上陸しかない!しかし上陸場所がない!20年の強運を信じて行くべきか!ゴールまであと1キロ!しかしこの先に瀬が2つある。 

 暗闇の中俺のカヌーが、ガツンと強い衝撃で倒木に引っかかる。横に向いた俺のカヌーに後続艇がどんどんぶつかってくる。この時点で俺の足がカヌーに挟まって動けなくなる。

 何とかカヌーから抜け出し大変なことがおこったことを認識する。あわてるな!俺があわてたらパニックになる。でも心はかなり動揺していた。しかしながらここから神がかり的に運がついてきたのだ。それは、次の日、昼間現場を見たとき なんていう強運なんだと思った。あの細い枝が、あそこの倒木があったからなどなど驚くことばかりであった。

 カヌー1艇を右岸土手に立て掛けカヌーをはしごに5人が無事に上がった。残されたのが、俺とはるみどんとお客さん1名の3人。中央の倒木に引っかかってるカヌーを踏み台にしていた。右岸に行くには、流れが早かったが、ここでもついていた。しっかりした倒木の枝が右岸にありロープを張ることができた。たくさんの荷物をもっていたはるみどんが、暗闇に流されたときもついていた。俺が飛び込んだ場所に倒木が踏み台になっていたり、とにかく神がかり的強運で8名右岸に上がった。ヘッドランプを流してしまったので真っ暗。はるみどんが携帯で警察に連絡する。警察も混乱していた。最初は、その場所から動くな!であったのだが、次の指示は、なんとか道まで出られないか?であった。じっとしてると体が冷えるので皆で声を出しながら山を上がる。上は牧場になっていた。やがてパトカーを見つけ携帯でこちらからパトカーが見えているとこを連絡。道に出たのだ。皆くたくたであった。

 そのあと、はるみどんからモロボックス(箱)を流してしまったと聞いた。その中に俺の財布が入っている。なんと1文無しだ。俺と同じように流したバックの中に財布を入れてたお客さんもいた。携帯を入れたバックをなくしたお客さんなどキャンプ場に帰っても眠れなかった。全ては、明日明るくなってからだ。今は何もできん!

 キャンプ場に戻ってから俺の判断ミスを詫びた。お客さんから逆に励まされた。「モロさん、お客さんというより仲間じゃないか!」その言葉にグラッときた。

 カナデイアンカヌーレスキュー講座を何度かやってきたが、明日 皆に最高の講座を見せてあげよう。そして現場放置のカヌー4艇やパドル みんなの荷物全て回収する!そう自分に言い聞かせ でも眠れなかった。バンガローの外は、相変わらず強風で騒がしかった。

翌日撮影した現場

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のんびり源流部を下るがこの後あわや大惨事に